情シス
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【2026年版】情シスが取り組むべき3大「制度・規制対応」|AIガバナンス・SCS評価制度・レガシー刷新の具体的な進め方

中小企業の社長・IT担当者向け。2026年に押し寄せる外部環境の変化(AI法・SCS評価制度・2025年の崖)に対応する情シスの3大業務課題を、制度の詳細・ステップ・ユースケース・スケジュール付きで解説。制度対応に特化した実践ガイドです。


情シスが抱える課題は多岐にわたります。問い合わせ対応、ひとり情シス、属人化、スキル維持……。課題の全体像を把握したい方は、まずは別記事「社内SE・情シスが抱える8つの課題と解決策」をご覧ください。

本記事では、その中でも 「制度・法規制の変化」に対する対応 に特化してお伝えします。2025年は、日本で初のAI法(AI推進法)が成立し、経済産業省からサプライチェーンセキュリティの新たな評価制度(SCS評価制度)が発表され、さらに「2025年の崖」として警鐘が鳴らされていたレガシーシステム問題がいよいよ現実の経営リスクとなった年でした。

2026年は、これらの動きが中小企業にも直接的に影響する年だと思います。「うちはまだ関係ない」と思っている間に、取引先から対応を求められたり、セキュリティ事故で経営に大打撃を受けたりするケースが急増しているようです。

本記事では、外部環境の変化(制度・規制)に対応する情シスの3大業務課題を、IT初心者にも分かるように図解・ユースケース・スケジュール付きで解説してみようと思います。

想定読者

  • 中小企業の社長・IT担当者の方で、制度・規制対応を優先したい方
  • AI推進法、SCS評価制度、レガシー刷新について、具体的な進め方を知りたい方
  • 取引先から対応を求められたり、法規制の準備を始めたい方

この記事で得られること

  • 制度・規制対応に特化した3大業務課題の全体像
  • 各制度の詳細(AIガバナンス、SCS評価制度、レガシー刷新)と、放置した場合のリスク
  • 中小企業が今すぐできる具体的なアクション(ステップ形式・準備項目)
  • 業種別ユースケースと対応スケジュールの目安(Gantt図付き)
  • 3つの課題の関係性と、並行して進めるメリット

本記事の位置づけ

この記事は 「制度・規制対応」 に特化しています。情シスの課題全体(問い合わせ、ひとり情シス、属人化、スキル停滞など)を知りたい方は、8つの課題と解決策の記事をご参照ください。

本記事の信頼性

  • 大手SIer(NTTDATA)にて4社のITコンサルティング・システム開発に従事
  • 事業会社の情報システム部門で社内SEとして勤務
  • 中小企業のIT・DX推進支援に携わる

【全体像】制度・規制対応に特化した3大業務課題

まず、外部環境の変化(制度・規制) に対応する3大業務課題の全体像を押さえておきましょう。

#業務課題なぜ今なのか
AIガバナンス整備AI推進法の全面施行、AI事業者ガイドラインの改定(2026年3月予定)
SCS評価制度・サプライチェーンセキュリティ対応2026年度末の制度開始を目指し、取引先からの要請が本格化
レガシーシステム刷新とクラウド移行「2025年の崖」が現実化、経産省の総括レポートで中小企業への警鐘

【業務課題①】AIガバナンス整備 ── 「AI、使っていいの?」に答えられる体制をつくる

AIガバナンスとは何か?

💡 AIガバナンスとは? 企業がAI(人工知能)を「安全に」「正しく」「責任を持って」使うためのルール・体制・仕組みのことです。

生成AIの業務活用が急速に広がるなか、「社員が勝手にChatGPTに社内データを入力していた」「AIが作った文書に誤った情報が含まれていた」といったトラブルが多発しています。こうしたリスクを未然に防ぎ、AIの恩恵を最大限に引き出すための「交通ルール」がAIガバナンスということです。具体的な策定手順は「生成AI利用ガイドラインの作り方」を、AIエージェントを導入する場合は「AIエージェントのセキュリティ対策」を参照してください。

なぜ2026年に取り組む必要があるのか

2025年5月に日本初のAI法(「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」、通称:AI推進法)が成立し、9月に全面施行されました。この法律により、以下の枠組みが動き出しています。

  • AI戦略本部が内閣に設置され、全閣僚参加の司令塔として機能
  • AI基本計画が2025年12月に策定され、企業への具体的な方針が示された
  • AI事業者ガイドラインが2026年3月末に改定予定

また、EUでは「EU AI法」が2026年8月にハイリスクAIの規制が全面適用される予定であり、海外取引のある企業は対応が不可欠です。

さらに、EYの調査(2025年)によると、AI関連のリスクで財務的損失を経験した企業は99%に上り、そのうち約3分の2が100万ドル以上の損失を被っているようです。AIを「使わないリスク」だけでなく「管理せずに使うリスク」が明確になっていますよね。

flowchart TD
    subgraph 外部環境["🌍 外部環境の変化"]
        A["AI推進法 全面施行<br/>(2025年9月)"]
        B["AI事業者ガイドライン<br/>改定(2026年3月予定)"]
        C["EU AI法<br/>ハイリスクAI全面適用<br/>(2026年8月予定)"]
    end

    subgraph 企業リスク["⚠️ 企業が直面するリスク"]
        D["社員の無秩序なAI利用<br/>(情報漏洩)"]
        E["AIの出力ミスによる<br/>業務トラブル"]
        F["取引先・顧客からの<br/>信頼低下"]
    end

    subgraph 対策["✅ やるべきこと"]
        G["AI利用ポリシー策定"]
        H["社内教育の実施"]
        I["リスク管理体制の構築"]
    end

    A --> D
    B --> E
    C --> F
    D --> G
    E --> H
    F --> I

    style 外部環境 fill:#1a3a5c,stroke:#4a90d9,color:#e0e8f0
    style 企業リスク fill:#5c1a1a,stroke:#d94a4a,color:#f0e0e0
    style 対策 fill:#1a5c3a,stroke:#4ad97a,color:#e0f0e8

中小企業が今すぐできるAIガバナンス整備 ── 4つのステップ

ステップ1:AI利用ポリシーを策定する

まず、「社内でAIをどう使ってよいか」のルールを明文化します。難しく考える必要はありません。A4用紙1〜2枚で十分です。

最低限盛り込むべき内容:

  • AIに入力してはいけないデータの種類(個人情報、営業秘密、顧客データなど)
  • 利用可能なAIツールの一覧(会社が許可したものだけを使う)
  • AIの出力結果は必ず人間が確認すること(特に対外文書や数値データ)
  • 問題が発生した場合の報告先と報告手順

ステップ2:AI利用の現状を把握する

すでに社員がどのようなAIツールを使っているかを把握します。「シャドーAI」(会社が把握していないAI利用)は、情報漏洩の大きなリスクです。

把握の方法:

  • 全社員向けの簡単なアンケート(利用ツール、用途、頻度)
  • ネットワークログの確認(IT部門で実施可能な範囲)

ステップ3:社内教育を実施する

ルールを作っても、社員が理解していなければ意味がありません。年に1〜2回、30分程度の研修で十分だと思います。

教育の内容例:

  • AIに入力してよいデータ・ダメなデータの具体例
  • AIの回答が間違っていた実例の共有
  • 問題が起きたときの報告手順の確認

ステップ4:定期的に見直す

AIの技術やガイドラインは急速に変化します。半年に1回を目安にポリシーと運用状況を見直してみてはいかがでしょうか。

ユースケース:中小企業のAIガバナンス実践例

ケース1:製造業(従業員50名)

  • 営業部門がAIチャットボットで見積もり作成を効率化したいと要望
  • 情シスが「顧客の取引単価は入力不可」「見積書の最終確認は必ず担当者が行う」というルールを策定
  • 月次で利用状況を確認し、問題がないかチェック

ケース2:卸売業(従業員30名)

  • 社長が「全社でAIを活用して生産性を上げたい」と方針を発表
  • 情シスが3つのAIツール(文書作成、翻訳、データ分析)を選定し、トライアル導入
  • 全社員向けに「AIの使い方ガイド」を配布し、四半期ごとに研修実施

ケース3:サービス業(従業員100名)

  • EU圏の取引先から「AIガバナンス方針の提示」を求められた
  • 情シスがISO/IEC 42001(AI管理システムの国際規格)を参考に、簡易版のガバナンス文書を作成
  • 取引先に提出し、信頼関係を維持

活用できる公的支援

支援策内容参照先
AI事業者ガイドライン企業がAIを利用・開発する際の指針(経産省・総務省)経済産業省 AIガバナンスページ
AI導入ガイドブック中小企業向けのAI活用手順書(経産省)同上
デジタル化・AI導入補助金2026AI機能を有するITツール導入を補助(旧IT導入補助金)デジタル化・AI導入補助金HP

【業務課題②】SCS評価制度・サプライチェーンセキュリティ対応 ── 取引を守るセキュリティの「共通ものさし」

SCS評価制度とは何か?

💡 SCS評価制度とは? 経済産業省が2026年度末の制度開始を目指して整備を進めている、サプライチェーン全体のセキュリティ対策を評価するための新しい仕組みです。

簡単に言えば、「あなたの会社のセキュリティ対策は、取引先として安心できるレベルですか?」を客観的に示す制度ということです。

これまでは、取引先ごとにバラバラのセキュリティ基準で確認が行われていました。SCS評価制度が始まると、★3〜★5の共通の「ものさし」で評価されるようになります。

なぜ中小企業に関係があるのか

近年、サプライチェーン攻撃(取引先のセキュリティの弱い部分を狙って、本命の大企業に侵入する手法)が急増しています。

2025年には、大手飲料メーカーへのランサムウェア攻撃により商品の受注・出荷が停滞し、コンビニチェーンや外食チェーンなど複数の取引先企業に影響が波及しました。また、大手通販サイトでは委託先の多要素認証(MFA)の設定不備が原因で被害が発生しています。

こうした事態を受け、大企業を中心に取引先のセキュリティ対策状況の確認が厳格化しています。SCS評価制度が始まると、「★3以上を取得していること」が取引条件になるケースが増えると予想されます。

つまり、セキュリティ対策が不十分だと、取引を失う可能性があるのです。

flowchart TB
    subgraph 現状["😰 現状の課題"]
        A["取引先ごとに<br/>バラバラな<br/>セキュリティ要求"]
        B["対策状況が<br/>外部から見えない"]
        C["中小企業は<br/>何をすればよいか<br/>分からない"]
    end

    subgraph SCS["⭐ SCS評価制度"]
        D["★3:基礎レベル<br/>全企業が目指す最低ライン<br/>約25項目"]
        E["★4:標準レベル<br/>主要取引先に求められる水準"]
        F["★5:国際水準<br/>重要インフラ等<br/>(2026年度以降検討)"]
    end

    subgraph 効果["✅ 期待される効果"]
        G["対策状況の<br/>『見える化』"]
        H["共通基準で<br/>効率的な確認"]
        I["取引先からの<br/>信頼獲得"]
    end

    A --> D
    B --> E
    C --> F
    D --> G
    E --> H
    F --> I

    style 現状 fill:#5c3a1a,stroke:#d9944a,color:#f0e8e0
    style SCS fill:#1a3a5c,stroke:#4a90d9,color:#e0e8f0
    style 効果 fill:#1a5c3a,stroke:#4ad97a,color:#e0f0e8

SCS評価制度の評価レベル

レベル対象評価方法開始時期
★3(基礎)全企業が最低限実施すべきレベル自己評価+専門家確認+経営層の適合宣言2026年度末頃
★4(標準)主要サプライチェーン企業に求められるレベル第三者評価を含むより厳格な審査2026年度末頃
★5(国際水準)重要インフラ関連企業等詳細な評価スキーム(今後検討)2026年度以降に検討

★3は、端末・サーバーの脆弱性管理(ソフトウェアの弱点を見つけて修正すること)、セキュリティ教育の実施、アクセス権限の管理など、約25項目が求められる見込みです。

中小企業が今すぐ取り組むべき5つの準備

準備1:自社のセキュリティ対策の現状を棚卸しする

まず、今の自社のセキュリティ対策がどのレベルにあるかを把握します。

チェックすべきポイント:

  • パソコンやサーバーのOS・ソフトウェアは最新の状態に更新されているか?
  • ウイルス対策ソフトは全端末に導入され、有効になっているか?
  • 退職者のアカウントは速やかに削除されているか?
  • 重要データのバックアップは定期的に取得されているか?
  • 社員向けのセキュリティ教育は実施されているか?

準備2:多要素認証(MFA)を導入する

💡 多要素認証(MFA)とは? パスワードに加えて、スマートフォンの認証アプリや指紋認証などの「もう1つの確認手段」を使うことで、不正ログインを防ぐ仕組みです。

2025年のインシデント事例でも、MFAの設定不備が被害の一因となったケースがありました。メールやクラウドサービスのログインにMFAを設定するだけで、セキュリティは格段に向上します。

準備3:インシデント対応計画を策定する

万が一、セキュリティ事故が起きたときの対応手順を事前に決めておきます。

最低限決めておくこと:

  • 第一報をどこに(誰に)連絡するか
  • 被害を拡大させないための初動対応(ネットワーク遮断の手順など)
  • 取引先や顧客への通知の判断基準と手順
  • 外部のセキュリティ専門会社の連絡先

準備4:IT資産を管理する

社内にどのようなIT機器やソフトウェアがあるかを把握し、一覧にまとめます。把握できていないIT資産は、管理もできませんよね。

準備5:「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の活用を検討する

中小企業向けに、国が認定する支援サービスが用意されています。SCS評価制度の★3・★4を安価に取得できるよう、新しい類型のサービスが2026年度に創設される予定です。

ユースケース:中小企業のSCS対応例

ケース1:自動車部品メーカー(従業員80名)

  • 元請メーカーから「2027年度中に★3取得を」と通達
  • 情シスが現状調査を実施し、OS更新の未対応端末が15台発見
  • 6か月計画で全端末の更新、MFA導入、バックアップ体制を整備

ケース2:ITサービス業(従業員20名)

  • 大手金融機関との取引継続のため★4取得を目標に設定
  • 外部セキュリティコンサルタントと連携し、脆弱性診断を実施
  • インシデント対応計画を策定し、年2回の訓練を開始

ケース3:建設業(従業員40名)

  • 「何から手をつけてよいか分からない」状態からスタート
  • IPAの「サイバーセキュリティお助け隊サービス」を活用し、現状診断を実施
  • 優先度の高い対策から順に着手し、1年後の★3取得を目指す

対応スケジュールの目安

gantt
    title SCS評価制度 対応ロードマップ(中小企業向け)
    dateFormat  YYYY-MM
    axisFormat  %Y/%m
    
    section 準備フェーズ
    自社セキュリティ現状棚卸し        :a1, 2026-03, 2M
    IT資産台帳の作成・整備            :a2, 2026-04, 2M
    ギャップ分析と優先順位付け        :a3, 2026-05, 1M
    
    section 対策実施フェーズ
    MFA導入・パスワードポリシー整備   :b1, 2026-06, 2M
    OS・ソフトウェア更新の徹底        :b2, 2026-06, 3M
    バックアップ体制の構築            :b3, 2026-07, 2M
    インシデント対応計画の策定        :b4, 2026-08, 2M
    社員向けセキュリティ教育          :b5, 2026-09, 1M
    
    section 評価取得フェーズ
    自己評価シートの記入              :c1, 2026-10, 1M
    専門家による確認・助言            :c2, 2026-11, 1M
    経営層による適合宣言              :c3, 2026-12, 1M
    ★3評価の申請・取得               :c4, 2027-01, 2M

【業務課題③】レガシーシステム刷新とクラウド移行 ── 「動いているから大丈夫」は最大のリスク

レガシーシステムとは何か?

💡 レガシーシステムとは? 古い技術やプログラミング言語で作られ、長年使い続けているITシステムのことです。

「動いているから問題ない」と思われがちですが、以下のような深刻なリスクを抱えています。

  • 開発・保守できる技術者が減り続けている(定年退職等)
  • メーカーのサポートが終了し、セキュリティの脆弱性が放置される
  • 新しいサービスやAIとの連携ができない
  • 維持費用がどんどん膨らむ(IT予算の8〜9割が保守運用費に)

「2025年の崖」は、もう目の前

経済産業省が2018年に警鐘を鳴らした「2025年の崖」とは、レガシーシステムを放置し続けた場合に2025年以降、年間最大12兆円の経済損失が発生するリスクのことです。

2025年5月に公表された経産省の「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」では、以下の厳しい現実が示されています。

  • レガシーシステム刷新に着手した企業は約半数にとどまり、中小企業では43.8%
  • 約63%の企業にレガシーシステムが依然として存在
  • システム移行のタイミングで問題が続発

特に中小企業に対しては、「オーダーメイドのスクラッチ開発は避け、パッケージやSaaS(クラウドサービス)を原則とすべき」 と明確に提言されています。

クラウド移行のメリットを理解する

💡 クラウドとは? 自社でサーバーを持たずに、インターネット経由でシステムやサービスを利用する仕組みです。

比較項目オンプレミス(自社設置)クラウド
初期費用高い(サーバー購入等)低い(月額利用)
保守運用自社で対応が必要サービス提供者が対応
セキュリティ更新自社で管理自動的に適用
災害対策自社で対策が必要データセンターで冗長化
拡張性都度ハードウェア追加柔軟に拡張・縮小可能
AI・新技術との連携追加開発が必要APIで容易に連携可能

中小企業向け:段階的クラウド移行ロードマップ

一気にすべてを移行する必要はありません。「小さな成功を積み上げる」アプローチが現実的だと思います。

flowchart TD
    subgraph STEP1["📋 STEP1:現状把握(1〜2か月)"]
        A1["社内のIT資産を<br/>棚卸し・一覧化"]
        A2["隠れレガシーの発見<br/>(Excel VBA・Access・<br/>属人化ツール等)"]
        A3["各システムの<br/>リスクとコストを評価"]
    end

    subgraph STEP2["🎯 STEP2:優先順位付け(1か月)"]
        B1["移行しやすい領域の特定<br/>(勤怠・経費精算・<br/>メール等)"]
        B2["リスクの高いシステムの特定<br/>(サポート切れ・<br/>属人化等)"]
        B3["3年間のロードマップ策定"]
    end

    subgraph STEP3["🚀 STEP3:段階的移行"]
        C1["1年目:SaaS活用<br/>勤怠・経費精算・<br/>ファイル共有等"]
        C2["2年目:基幹系の刷新<br/>販売管理・会計・<br/>在庫管理等"]
        C3["3年目:データ活用基盤<br/>BI・AIとの連携"]
    end

    STEP1 --> STEP2
    STEP2 --> STEP3
    A1 --> A2 --> A3
    B1 --> B2 --> B3
    C1 --> C2 --> C3

    style STEP1 fill:#1a3a5c,stroke:#4a90d9,color:#e0e8f0
    style STEP2 fill:#3a1a5c,stroke:#904ad9,color:#e8e0f0
    style STEP3 fill:#1a5c3a,stroke:#4ad97a,color:#e0f0e8

モダナイゼーション手法の選び方

レガシーシステムの刷新方法は一通りではありません。自社の状況に合った手法を選ぶことが重要です。

手法概要向いているケースコスト目安
リホストそのままクラウドに移すだけ急いで移行が必要な場合
リプラットフォームクラウド向けに一部調整パフォーマンス改善が目的低〜中
リプレイスSaaS等の既製品に置き換え標準的な業務(会計・勤怠等)
リファクタリングコードを書き直して最適化独自業務ロジックが重要な場合中〜高
リビルドゼロから作り直す現行システムが全く合わない場合

中小企業にとって最も現実的な選択肢は、リプレイス(SaaS・パッケージへの置き換え) だと思います。「業務にシステムを合わせる」のではなく、「システムに業務を合わせる(Fit to Standard)」 という考え方が重要です。

ユースケース:中小企業のレガシー刷新例

ケース1:小売業(従業員60名)── 会計システムのクラウド移行

  • 15年使っていた会計ソフトのサポートが終了
  • クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワード等)へリプレイス
  • 導入期間3か月、初期費用を大幅に削減し、税理士との連携も効率化

ケース2:製造業(従業員150名)── 販売管理システムの刷新

  • Accessで作った販売管理システムが属人化し、担当者の退職が迫る
  • クラウドERP(統合基幹業務システム)のパッケージに移行
  • 業務プロセスを標準化し、在庫管理・請求管理を一元化

ケース3:物流業(従業員90名)── 段階的なクラウド移行

  • 1年目:メール・ファイル共有をMicrosoft 365に移行
  • 2年目:勤怠管理・経費精算をSaaSに移行し、紙の申請を廃止
  • 3年目:配車管理システムをクラウドサービスに移行、AIによる配車最適化を検討

補助金の活用

補助金対象補助率
デジタル化・AI導入補助金2026ITツール導入全般最大1/2〜3/4
ものづくり・商業・サービス補助金生産性向上のためのシステム投資最大1/2〜2/3
事業再構築補助金事業転換に伴うシステム投資最大1/2〜3/4

【関係性】3つの課題は「攻め」と「守り」の表裏一体

3つの業務課題は独立しているように見えますが、実は密接に関連しています。

flowchart TD
    subgraph 攻め["⚔️ 攻め(DX推進・競争力向上)"]
        AI["①AIガバナンス整備"]
        LEGACY["③レガシー刷新<br/>クラウド移行"]
    end

    subgraph 守り["🛡️ 守り(リスク管理・信頼構築)"]
        SCS["②SCS評価制度<br/>サプライチェーンセキュリティ"]
    end

    AI <-->|"AIを安全に使うには<br/>セキュリティ基盤が必要"| SCS
    LEGACY <-->|"クラウド移行で<br/>セキュリティ水準が向上"| SCS
    AI <-->|"レガシー脱却で<br/>AI活用の基盤ができる"| LEGACY

    style 攻め fill:#1a3a5c,stroke:#4a90d9,color:#e0e8f0
    style 守り fill:#5c1a1a,stroke:#d94a4a,color:#f0e0e0
  • AIガバナンス × SCS評価制度:AIを安全に活用するには、データのセキュリティ管理が不可欠。SCS評価制度への対応が、AIガバナンスの基盤にもなる
  • レガシー刷新 × SCS評価制度:古いシステムはセキュリティ更新ができず、SCS評価で低評価になりやすい。クラウド移行により、セキュリティ水準を効率的に引き上げられる
  • レガシー刷新 × AIガバナンス:レガシーシステムではAIとの連携が困難。クラウド移行によりAI活用の基盤が整う

つまり、3つを並行して進めることで、投資効率が大幅に向上するということです。


よくある質問(FAQ)

AIガバナンスについて

Q1. 社員数20名の会社でも、AIガバナンスは必要ですか?

A. はい、必要だと思います。社員が1人でもAI(ChatGPT等)を業務で使っていれば、情報漏洩のリスクがあります。規模に関わらず、最低限のルール(AI利用ポリシー)は策定してみてはいかがでしょうか。A4用紙1枚で十分です。

Q2. AI推進法に違反すると罰則はありますか?

A. 現時点では直接的な罰則規定はありません。ただし、不適切なAI利用が発覚した場合、政府から調査・指導が行われ、改善しない場合は事業者名の公表もあり得ます。また、将来的な規制強化も視野に入っているようです。

Q3. AIガバナンスの整備に、どれくらいの費用がかかりますか?

A. 社内でポリシー策定と教育を行う場合、外部費用はほぼかかりません。外部コンサルタントに依頼する場合は数十万円〜が目安ですが、まずは自社でできる範囲から始めることをお勧めします。

SCS評価制度について

Q4. SCS評価制度は法律で義務化されるのですか?

A. 法律による一律の義務化ではありません。ただし、取引先(発注元企業)から「★3以上の取得」を取引条件として求められるケースが増えると予想されます。実質的には対応が必要になる企業が多いでしょう。

Q5. ★3を取得するのにどれくらいの期間と費用がかかりますか?

A. 現状のセキュリティ対策の状況によりますが、対策実施に6〜12か月、取得手続きに1〜2か月が目安です。費用は、自社で対応できる部分が多ければ数十万円程度、外部支援を活用する場合は100万円〜が目安です。「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の新類型を利用すれば、より安価に取得できる見込みです。

Q6. 取引先からまだ何も言われていませんが、準備は必要ですか?

A. はい、早めの準備をお勧めします。2026年度末の制度開始直前に慌てて対応しようとすると、セキュリティ専門家やサービスの予約が集中し、対応が遅れるリスクがあります。

レガシーシステム刷新について

Q7. 「動いているシステム」を変える必要があるのですか?

A. 「動いている」ことと「安全で効率的に動いている」ことは別です。サポート切れのシステムはセキュリティリスクが高く、保守費用も年々増加します。また、新技術(AI等)との連携ができず、競争力の低下にもつながります。

Q8. クラウドに移行すると、データは安全ですか?

A. 主要なクラウドサービス(AWS、Azure、Google Cloud等)は、多くの中小企業が自社で実現できるレベルをはるかに超えるセキュリティ対策を実施しています。ただし、クラウドの設定ミスは事故につながるため、適切な設定管理が重要です。

Q9. 一度にすべてのシステムを移行する必要がありますか?

A. いいえ、段階的に進めるのが現実的だと思います。まずは移行しやすい領域(メール、ファイル共有、勤怠管理など)から始め、成功体験を積んだ上で、基幹システムに取り組むのがお勧めです。


【まとめ】制度・規制対応の3つの課題

本記事の内容をまとめると、こんな感じになります。

課題最初の一歩期限の目安
①AIガバナンス整備AI利用ポリシーをA4用紙1枚で作るAI事業者ガイドライン改定(2026年3月)までに
②SCS評価制度対応自社のセキュリティ対策を棚卸しする2026年度末の制度開始に備えて
③レガシー刷新・クラウド移行社内のIT資産を一覧化する3年ロードマップを策定

これらの課題は、制度・規制の変化という外部環境に直面した情シスが、優先対応すべき「業務課題」です。一見すると「守り」の仕事に見えますが、実は会社の成長を支える「攻め」の基盤づくりでもあります。

AIを安全に活用できる会社は、業務効率化や新規事業創出で競合に差をつけられます。セキュリティ対策がしっかりした会社は、大手企業との取引が拡大します。クラウドに移行した会社は、場所を選ばない柔軟な働き方と、データ活用による意思決定の高度化を実現できます。

なお、情シスの課題全体(問い合わせ対応、ひとり情シス、属人化、スキル維持など)を把握したい方は、8つの課題と解決策の記事もあわせてご覧ください。

大変な時代ですが、だからこそやりがいのある時代だと思います。ぜひ、本記事が皆さまの「明日からの一歩」の参考になっていただけたら幸いです。


関連記事

以上となります。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


参考:

本記事は2026年2月時点の情報に基づいて作成しています。制度やガイドラインの最新情報は、各省庁の公式サイトをご確認ください。